メンター通信 バックナンバー
| 日時 | タイトル |
|---|---|
| 2024/02/13(火) 08:00 | MFBメンター通信「メンターとしての平山さん、 メンターとしてのヴィム・ヴェンダース」 |
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MFBメンター通信
「メンターとしての平山さん、
メンターとしてのヴィム・ヴェンダース」
■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■
こんにちは。
人間力研究所 MFBメンターの
えにあひろ ことゆだひろかずです。
人間力研究所とは、
誰もがメンターという相談相手を持てる世の中づくりを目指し、
MFBメンターを育成している一般社団法人です。
今回のテーマは?
メンターとしての「平山さん」、
そしてメンターとしてのヴィム・ヴェンダース!
「今が幸せか?」と訊かれて、
あなたならどう答えますか?
「100%幸せです」と答えられる人は、
この映画も、この論考も、必要がないかも。(笑)
退屈な日々の繰り返しに飽きたり、嫌気が差したり。
このまま歳老いていく恐怖や、
将来に希望が見つからず、漠とした不安を覚える。
あるいは仕事に不満があったり、
人間関係で生きづらさを抱えている。
そんな方が、「平山さんに会いにゆく」感覚で、
この映画のリピーターになっているようなんです。
この映画とは?
ヴィム・ヴェンダース監督の『Perfect Days』。
日独合作で去年、役所広司さんがカンヌ最優秀俳優賞に輝き、
作品が今年のアカデミー賞ノミネートで再注目されました。
平山さんとは?
役所広司さん演じる公衆トイレの清掃員です。
The Tokyo Toilet Projectのユニフォームを着用し、
車に乗っているので、そこに雇われているようです。
「一人暮らしも悪くない」
「老いることへの希望を抱いた」
「こんな風に歳を取ってみたいと初めて思えた」
「(選択肢の一つとして)こんな生き方もあるんだ、と
気持ちが軽くなった」
「勇気づけられた」
SNSやYouTubeには、そんな感想が溢れています。
さて、平山さんは経歴も年齢も不詳なのですが、
移動の車中で聴く古いカセットテープへの拘りや、
特定の音楽傾向から推測して、
60代半ばか、あるいは超えている可能性も。
PCやスマホは持たず、
インターネットとは無縁の生活を送っています。
とにかくそんな平山さんの仕事振りや、
休日のプライベートも含めた日常が、
丁寧に丁寧に描かれています。
まるで彼目線でのドキュメンタリーでも観ているかのように。
彼の目が観るものを観、肌が感じる風を感じ、
1人の男の日々の、心の小さな揺らぎを丁寧に追う、
ロードムービーの巨匠ヴィム・ヴェンダースならではの
カメラワークが冴えています。
ちなみに蘊蓄を垂れておくと、
ヴィム・ヴェンダースは今も変わらず、
熱狂的なオズ・ファンを公言し、
小津を師として敬愛しています。
「小津映画は現代的な作品で、真の国際映画だ」と。
平山姓の由来ですが、
小津映画に頻繁に登場する中年か初老の男性の名前で、
あたかも記号のように脈絡なく使われます。
名作「東京物語」で、どこか僧侶を彷彿とさせる
笠智衆演じる父親が有名かも。
さて、では私自身は、この映画の何に惹かれ、
一体、この映画に何を観たのか?
(※未見の方は、以下ご留意ください)
結論を先に言ってしまうと、
もし「わからないことがわかる」ことが
「悟り」なのだとしたら?
オーラスで、
運転中の平山の顔がアップになる長回しシーンは、
明らかに悟りを啓いた人、
あるいは控え目に言って、何かを受け容れた人、
赦した人の表情に見えるのでした。
長回しの数分間に、
平山さんの半生が反復された印象を持ちました。
(台詞は一切なく、確たる根拠もないのですが)
嗚呼この人は、やっと自分自身を赦したのだと!
恐らく人生の途上で何事かが起き(父親が絡んでいる)、
喩えば、やり手のビジネスパーソンだった彼が、
大病を得て死線を彷徨い、
リタイアせざるを得なくなり、
独り暮らしを始め、苦労して今の職と出会い、
お気に入りの趣味とルーティンを見つけ、
丁寧に丁寧に生きて来て、
知らず知らずのうちに、
川面の煌めきや、朝陽に導かれるように生き、
木漏れ日や樹々の若芽を愛で、読書をする人となり、
僧侶的な生き方をするようになって、
森羅万象あらゆる存在とつながる生き方を覚えたのかも。
(一緒に観た妻が、「これはパートナーシップの映画だね」
と感想を述べていましたが。)
これまでの人生に起きた事を、
そっくりそのまま繰り返しても悔いはしない。
しないどころか、むしろ自ら望んで、全肯定したい!
今ここの幸せに感謝し、満足しているから。
迷いが消えて悟りに至ったのではなく、
迷いも悟りもない境地で、むしろ、
ちっぽけな自我(エゴ)への拘りを捨て去ること。
ただひたすら歩めばよい!
迫力あるニーナ・シモンの歌声「Feeling Good」が流れる中、
平山の頬を涙が静かに伝います...
目撃者たる私は、不意を突かれ、不覚にも涙する。
まるで生まれて初めて歌声を聴いた幼な子のように!
(「Feeling Good」が元々は、黒人解放を願った魂の叫びだと、
後で知りました)
ヴィム・ヴェンダース自身が、
最初の構想では、悟りに向かう僧侶のイメージを
平山に被せていたと語っています。
平山にはモデルがあり、
「ハレルヤ」で有名なカナダのシンガーソングライター、
レナード・コーエンです(2016年に逝去)。
9才で父親を亡くしたコーエンは、
若い頃から禅に傾倒し、日本人僧侶に師事していました。
ヴィムはレナード・コーエンと親交があり、
その人間性から多くの影響を受けたと語っています。
これらは傍証にすぎませんが、
(私の直観を信じるなら)
映画の冒頭から、都心の朝の公衆トイレを舞台に
さりげなく挟まれるいくつかのエピソードが、
禅的な解釈を施すことで、最初の印象は一変します!
道元の説く生活禅では、
森羅万象に仏性があり(唯仏論)、
日常生活の中で実践し(行住坐臥)、
その仏性を活性化させることこそ修行です。
一例を挙げると、例えば、
禅でいう「愛語」とは、
慈悲の心からいたわりの言葉をかけ、
人と接することです。
平山は、迷子の泣いている子どもに、
子ども目線で優しく接し、
礼も言わず、逆に怪しんで去っていく母親の態度に、
怒りも見せず、そっくりそのまま受け容れます。
また「布施」とは、
人に物を施す意ではなく、
自分の欲望を抑えることです(不貪)。
同僚の若いタカシに請われて、
恋の成就のためにお札を上げるエピソードは、
いつもの彼のルーティンであるお酒の楽しみを、
給料日まで控える結果をもたらします。
また、例えば「利行」とは、
自利と利他を一つのものと考える立場ですし、
例えば「同事」とは、
相手と自分は同じ人間と観る立場です。
(公園を追われたホームレスに扮した田中泯が舞う、
樹木の精霊のようなダンスは、
あるいは平山にしか見えてはいない)
なので、もちろんこの布施・愛語・利行・同事の実践は、
一つひとつ切り離せませんし、
それが禅の精神をもって日常を生きるということです。
挙げるとキリがないのですが、
「少欲」とは、欲望を少なくして生きることですし、
「知足」とは、これで充分だと足るを知ることに他ならない。
これらは良く知られている禅語かも。
と、ここまで書き進んできて、はたと我に返る。
あのオーラスのシーンの意味は、
本当にそれだけなのだろうか?
(それだけならヴェンダースは、
老境に入ったかつての前衛芸術家の域を出まい)
神社の境内で、
神主から樹木の若芽をもらう意図は何だろう?
あれが初めてではなさそうだ。
平山さんには珍しく強い意志表示を感じた。
もう一つ、気になっていた光景があった。
まるで目前の東京スカイツリーの電飾に対抗するかのような、
二階のプラントを覆う紫外線ライトの存在だ。
(平山が住むちっぽけな木造古アパートに似つかわしくない)
なぜヴェンダースは、何度も何度も、
ロングショットで、あのLED光で輝く部屋を
見せる必要があったのか?
私の推理はこうだ。
平山さんの生き方はたしかに、
コロナ禍が明けた今の時代を生きる方法を、
私達に教えてはくれるし、心を打つ。
それでも、都会の中のオアシス、
ユートピアだという批判は免れないだろうと思う。
しかし、彼がある種の「革命家」だとしたら?
「少ないほうが豊か」だとする、
経済成長に依存しないシステム、
やがて「資本主義の次に来る世界」の預言者だとしたら?
(了)
さて、人間力研究所には、
様々な専門知識やスキルを持った
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最後までお読みいただきありがとうございました。
MFBメンター・ゆだひろかず
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「メンターとしての平山さん、
メンターとしてのヴィム・ヴェンダース」
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こんにちは。
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メンターとしての「平山さん」、
そしてメンターとしてのヴィム・ヴェンダース!
「今が幸せか?」と訊かれて、
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「100%幸せです」と答えられる人は、
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退屈な日々の繰り返しに飽きたり、嫌気が差したり。
このまま歳老いていく恐怖や、
将来に希望が見つからず、漠とした不安を覚える。
あるいは仕事に不満があったり、
人間関係で生きづらさを抱えている。
そんな方が、「平山さんに会いにゆく」感覚で、
この映画のリピーターになっているようなんです。
この映画とは?
ヴィム・ヴェンダース監督の『Perfect Days』。
日独合作で去年、役所広司さんがカンヌ最優秀俳優賞に輝き、
作品が今年のアカデミー賞ノミネートで再注目されました。
平山さんとは?
役所広司さん演じる公衆トイレの清掃員です。
The Tokyo Toilet Projectのユニフォームを着用し、
車に乗っているので、そこに雇われているようです。
「一人暮らしも悪くない」
「老いることへの希望を抱いた」
「こんな風に歳を取ってみたいと初めて思えた」
「(選択肢の一つとして)こんな生き方もあるんだ、と
気持ちが軽くなった」
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さて、平山さんは経歴も年齢も不詳なのですが、
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特定の音楽傾向から推測して、
60代半ばか、あるいは超えている可能性も。
PCやスマホは持たず、
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とにかくそんな平山さんの仕事振りや、
休日のプライベートも含めた日常が、
丁寧に丁寧に描かれています。
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1人の男の日々の、心の小さな揺らぎを丁寧に追う、
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ちなみに蘊蓄を垂れておくと、
ヴィム・ヴェンダースは今も変わらず、
熱狂的なオズ・ファンを公言し、
小津を師として敬愛しています。
「小津映画は現代的な作品で、真の国際映画だ」と。
平山姓の由来ですが、
小津映画に頻繁に登場する中年か初老の男性の名前で、
あたかも記号のように脈絡なく使われます。
名作「東京物語」で、どこか僧侶を彷彿とさせる
笠智衆演じる父親が有名かも。
さて、では私自身は、この映画の何に惹かれ、
一体、この映画に何を観たのか?
(※未見の方は、以下ご留意ください)
結論を先に言ってしまうと、
もし「わからないことがわかる」ことが
「悟り」なのだとしたら?
オーラスで、
運転中の平山の顔がアップになる長回しシーンは、
明らかに悟りを啓いた人、
あるいは控え目に言って、何かを受け容れた人、
赦した人の表情に見えるのでした。
長回しの数分間に、
平山さんの半生が反復された印象を持ちました。
(台詞は一切なく、確たる根拠もないのですが)
嗚呼この人は、やっと自分自身を赦したのだと!
恐らく人生の途上で何事かが起き(父親が絡んでいる)、
喩えば、やり手のビジネスパーソンだった彼が、
大病を得て死線を彷徨い、
リタイアせざるを得なくなり、
独り暮らしを始め、苦労して今の職と出会い、
お気に入りの趣味とルーティンを見つけ、
丁寧に丁寧に生きて来て、
知らず知らずのうちに、
川面の煌めきや、朝陽に導かれるように生き、
木漏れ日や樹々の若芽を愛で、読書をする人となり、
僧侶的な生き方をするようになって、
森羅万象あらゆる存在とつながる生き方を覚えたのかも。
(一緒に観た妻が、「これはパートナーシップの映画だね」
と感想を述べていましたが。)
これまでの人生に起きた事を、
そっくりそのまま繰り返しても悔いはしない。
しないどころか、むしろ自ら望んで、全肯定したい!
今ここの幸せに感謝し、満足しているから。
迷いが消えて悟りに至ったのではなく、
迷いも悟りもない境地で、むしろ、
ちっぽけな自我(エゴ)への拘りを捨て去ること。
ただひたすら歩めばよい!
迫力あるニーナ・シモンの歌声「Feeling Good」が流れる中、
平山の頬を涙が静かに伝います...
目撃者たる私は、不意を突かれ、不覚にも涙する。
まるで生まれて初めて歌声を聴いた幼な子のように!
(「Feeling Good」が元々は、黒人解放を願った魂の叫びだと、
後で知りました)
ヴィム・ヴェンダース自身が、
最初の構想では、悟りに向かう僧侶のイメージを
平山に被せていたと語っています。
平山にはモデルがあり、
「ハレルヤ」で有名なカナダのシンガーソングライター、
レナード・コーエンです(2016年に逝去)。
9才で父親を亡くしたコーエンは、
若い頃から禅に傾倒し、日本人僧侶に師事していました。
ヴィムはレナード・コーエンと親交があり、
その人間性から多くの影響を受けたと語っています。
これらは傍証にすぎませんが、
(私の直観を信じるなら)
映画の冒頭から、都心の朝の公衆トイレを舞台に
さりげなく挟まれるいくつかのエピソードが、
禅的な解釈を施すことで、最初の印象は一変します!
道元の説く生活禅では、
森羅万象に仏性があり(唯仏論)、
日常生活の中で実践し(行住坐臥)、
その仏性を活性化させることこそ修行です。
一例を挙げると、例えば、
禅でいう「愛語」とは、
慈悲の心からいたわりの言葉をかけ、
人と接することです。
平山は、迷子の泣いている子どもに、
子ども目線で優しく接し、
礼も言わず、逆に怪しんで去っていく母親の態度に、
怒りも見せず、そっくりそのまま受け容れます。
また「布施」とは、
人に物を施す意ではなく、
自分の欲望を抑えることです(不貪)。
同僚の若いタカシに請われて、
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また、例えば「利行」とは、
自利と利他を一つのものと考える立場ですし、
例えば「同事」とは、
相手と自分は同じ人間と観る立場です。
(公園を追われたホームレスに扮した田中泯が舞う、
樹木の精霊のようなダンスは、
あるいは平山にしか見えてはいない)
なので、もちろんこの布施・愛語・利行・同事の実践は、
一つひとつ切り離せませんし、
それが禅の精神をもって日常を生きるということです。
挙げるとキリがないのですが、
「少欲」とは、欲望を少なくして生きることですし、
「知足」とは、これで充分だと足るを知ることに他ならない。
これらは良く知られている禅語かも。
と、ここまで書き進んできて、はたと我に返る。
あのオーラスのシーンの意味は、
本当にそれだけなのだろうか?
(それだけならヴェンダースは、
老境に入ったかつての前衛芸術家の域を出まい)
神社の境内で、
神主から樹木の若芽をもらう意図は何だろう?
あれが初めてではなさそうだ。
平山さんには珍しく強い意志表示を感じた。
もう一つ、気になっていた光景があった。
まるで目前の東京スカイツリーの電飾に対抗するかのような、
二階のプラントを覆う紫外線ライトの存在だ。
(平山が住むちっぽけな木造古アパートに似つかわしくない)
なぜヴェンダースは、何度も何度も、
ロングショットで、あのLED光で輝く部屋を
見せる必要があったのか?
私の推理はこうだ。
平山さんの生き方はたしかに、
コロナ禍が明けた今の時代を生きる方法を、
私達に教えてはくれるし、心を打つ。
それでも、都会の中のオアシス、
ユートピアだという批判は免れないだろうと思う。
しかし、彼がある種の「革命家」だとしたら?
「少ないほうが豊か」だとする、
経済成長に依存しないシステム、
やがて「資本主義の次に来る世界」の預言者だとしたら?
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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