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| 日時 | タイトル |
|---|---|
| 2024/04/16(火) 08:00 | MFBメンター通信:運命は性格の中にある〜オッペンハイマーを性格分析する |
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MFBメンター通信
運命は性格の中にある
〜オッペンハイマーを性格分析する
■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■-□-■
こんにちは。
人間力研究所 MFBメンターの
えにあひろ ことゆだひろかずです。
人間力研究所とは、
誰もがメンターという相談相手を持てる世の中づくりを目指し、
MFBメンターを育成している一般社団法人です。
さてなぜこのテーマなのか?
皆さまはもう映画「オッペンハイマー」をご覧になりましたか?
※不要なネタバレはしないように気をつけますが、
気になる方は映画を観てから読んでくださることをお勧めします。
映画の内容は?
アメリカの高名な理論物理学者ロバート・オッペンハイマーが
人類初の核実験を成功に導くまでの過程と、
並行して共産圏のスパイ疑惑により公職を追放されるまでの
苦悩とをつぶさに描いています。
同時に広島と長崎への原爆投下とその惨状を知り、
一転して水爆開発の反対者となり、
孤立し罪悪感に苛まれ神経を病んでいく様子も。
冒頭の問いに答えると。
オッペンハイマーとは何者なのか?その問いに尽きます。
彼の性格から迫ってみたいと思います。
芥川龍之介の「侏儒の言葉(遺稿)」にこうあります。
「運命は偶然よりも必然である。
『運命は性格の中にある』という言葉は決して等閑に生まれたものではない」
芥川ほど己の生まれ持った性格を呪い、
性格(エゴの声なのだが)に苦しめられた作家もいないように思えます。
「運命は性格の中にある」
その信念ゆえに自死に導かれたのですから、説得力があります。
芥川の用語では「神経」と呼ばれるのですが。
オッペンハイマー(1904〜1967)の運命を決めた彼の性格の正体に
迫ってみたいと思います。
そして後世を生きる私達は知っています。
それは同時に彼の運命ばかりか、
広島と長崎の無辜の民24万人の運命をも左右したことを。
内向型か外向型かを決めるのは、内面と外(周囲)とどこに関心を向けるのを好むか?
そしてどこからエネルギーを得、動機付けられるか?
オッペンハイマーは明らかに内向型です。
(以下、個々の観察結果は、YouTubeに溢れる本人からのデータ分析による)
マインドを形成する心的エネルギーのセンターはどこか?
そのセンターの周りに自我が最も強く形成されます。
彼と世界との関わり方は、
知的戦略とビリーフに支えられているので
オッペンハイマーは思考センターの人です。
社会的動物としての人が、
集団の中で内的葛藤を解決する方法=社会的スタイルはどうか?
原爆製造を率いるリーダーとして、ロスアラモス研究所での彼は、
まるで人が変わったように見え、
一見社交的な自己主張型か融和型の人にも見えますが(これには本能タイプが関わっていて後述します)、
若い日の引きこもり傾向や、
下記の聴聞会での態度から診てオッペンハイマーは遊離型です(関わりから離れることでストレスに対応)。
問題が起きた時の態度はどうでしょう?
オッペンハイマーは合理型の典型です(後の二つは楽観型か感情的反応型)。
トラブルへの対処法は冷静で、個人的感情は脇に置き、
物事を効率優先で客観的、合理的に捉えようとしています。
同じ気質の科学者集団の中ではうまく順応し指導力を発揮できた彼が、
軍人との交渉で苦労し、政治家達に理不尽にも思える論理で糾弾され、
やがて追放される過程に象徴的に現れています。
「ここで起きていることに自分は関係ない。
この人たちとは違う。この場に自分は合わない。」
ここまでで一度整理すると、彼は内向型で、
思考センターで、遊離型で、合理志向の性格タイプ。
つまりそれらを総合すると、
オッペンハイマーは「調べる人(The Investigator)」の可能性が高いと思われます。
別名「考える人」や「観察者」の呼称も。
もっと踏み込むと、
「因習を打破する人」だと思われます。(エニアグラムでいうとタイプ5-4)
彼の実像に迫れば迫るほど、さらにその後の人生に起きたことを加味すると、
「問題を解決する人」(5-6)よりもそっちの方がピッタリきます。
「未来を見通す知性や独創性を見せる。もしくはエキセントリックになって孤立していく」
そのままの人生です。
そしてもう一つの大事な要素として、
上述した彼の「社交性」ですが本能型に秘密が隠されています。
適応と行動に優れるオッペンハイマーは社会的本能優先型です。
(もう二つは性的優先型、自己保存優先型)
愛称はスペシャリスト、専門家です。
2番目が性的本能で、盲点が自己保存本能だと思われます。
最小のユニットが家族で、
次により大きな科学者の国際的なネットワーク、ロスアラモス研究所のチーム、
国家への献身と、国家を超えた大義への貢献、
彼はその狭間で常に葛藤し、現実に葛藤に巻き込まれます。
その上に激烈な競争と嫉妬、名誉欲と、勝ち負けへの拘りと、
強い女性にかしずく傾向と、大人になり切れない子供じみた要素も見え隠れしていました。
原爆開発を引き受ける前、
親友でライバルのアーネスト・ローレンスにノーベル物理学賞が授与され、
先を越されたオッペンハイマーは焦っていました。
短期間での原爆製造の原動力になったのは、
ユダヤ同胞を迫害するナチスドイツへの憎悪と怒りからだっと後に述べています。
それでは「因習を打破する人で、
社会的本能優先型で自己保存盲点の人」の人物像とは具体的にどんなものなのか?
その愛称のスペシャリストという定義のとおり、
特定のタスクや役割を与えられて初めて輝くタイプです。
「観察者」全体の中でも特にエレガントな排他主義があり、
エリート主義があります。
そしてその未成熟なエリート主義者の部分が
やがてオッペンハイマーの人生を左右するアキレス腱となっていくのですが、
ノーラン監督の映画は実にリアルに饒舌に描いていました。
人間の裏表、人間の心の醜さと複雑さ、人間の怖さを彼は知らないかのようです。
ひとつ目は、
オッペンハイマーの対極にある人物として登場する政治家で原子力委員長のルイス・ストロースとの対決です。
8つ年長の彼もまた物理学者に成るのが夢だったのですが、
家が貧しく、社会に出て働かなければならなかった叩き上げの人物。
オッペンハイマーの支援者として近づき、
オッペンハイマーは政府に顔の効く彼を良き助言者、長年の友人として遇していました。
映画「アマデウス」を観た方なら、
天才肌のモーツァルトに嫉妬し死に追いやるサリエリの役割というとわかりやすいかも。
事もあろうにオッペンハイマーは公衆の面前で、
そのストロースの中途半端な知性を辛かい笑い者にした過去があり、
彼は忘れていた節があります。
映画の終盤で、なぜそこまでオッペンハイマーを憎むのかと問われ、
ストロースが告白するシーンがあります。
もう一つ私達が忘れてならないのは、
「頭脳明晰な」知性主義の限界でもあり、
オッペンハイマーの「性格」の欠点に関わる本質的な部分です。
彼は決して「創り出した物と、
その結果に無自覚なナイーブな科学者ではなかった」という点です。
「(原爆を)人間の上に落とすべきではない」と主張した一部の人達の声は掻き消され、
オッペンハイマーは聴こうとはしなかったのです。
原爆実験の成功後、足を踏み鳴らして歓声を上げて喜びを露わにする人々のシーンが描かれていました。
ほどなくして人々の顔が歪み、爛れた皮膚が剥がれ落ち、
崩れ落ちるオッペンハイマーの妄想シーンが描かれ、彼の表情も苦痛に歪みます。
また当時の物理学の水準では、
核爆発で大気が連鎖反応を起こし地球が全滅するかもしれず、
「その可能性は計算できないがゼロではない」と皆恐れていました。
その恐れの中、実験は強行され、恐れは杞憂に終わり、
オッペンハイマーは神との賭けに勝ったと思っていました。
知らなかったのですが、1960年にオッペンハイマーは日本を訪れています。
羽田で記者団から原爆開発を「後悔しているか」と聴かれ、
「後悔はしていない」
「(それは)申し訳ないと思っていないということではない」
と歯切れの悪い返答をしています。
どういう事情があったのか、或いは望まなかったのか、
広島と長崎を訪れることはありませんでした。
死の2年前のインタビューでオッペンハイマーはこう語っています。
記者「今も良心の呵責に苦しんでいるように見えるが?」
「私達には大義があったと信じています。しかし私達の心は完全に楽になってはいけないと思うのです。
私は今になっても、あの時もっとよい道があったと言える自信がありません。私にはよい答えがないのです。」
「世界はそれまでと変わってしまった。」
そして最後に後年有名になった
「我は死 世界の破壊者」
という謎のメッセージを人類に残して62歳で世を去りました。
(出典は、NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」2024年2月19日放送より)
「我は死(神)なり 世界の破壊者なり」
この言葉そのものは、
若い彼が愛読したというヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター(神の詩)」の一節です。
復唱するオッペンハイマーの眼は虚ろに見えます。
この性格特有の冷笑的な攻撃性は影をひそめ、
虚無的で、自己抑制的で孤立し、絶望感でいっぱいの表情にも、
隣のタイプからくる自己陶酔的にも見えます。
性格を特定するための5つ目の要素は、対象関係なのですが、
オッペンハイマーの性格には「拒絶」の特有のパターンがあります。
(原点は親との)愛着関係からの「拒絶」がベースにあるのですが、
迫り来る死を前にして(死因は喉頭がん)、恐らく彼の内面では、
世界と人類すべてを拒絶してしまったと感じていたかもしれません。
オッペンハイマーだけに責めを負わせるのは酷だろうと思います。
ドイツではハイゼンベルクが、日本では仁科芳雄が軍部に駆り出され、
原爆開発を巡って鎬を削っていました。
研究半ばですが、彼ら二人もまた、
オッペンハイマーと同じ「性格」(観察者)だと推測されます。
1904年生まれのオッペンハイマーより1つ下の生まれの日本の作家で、
原民喜という寡作な小説家がいました(明治38年生)。
偶々帰省していた故郷の広島で被爆し、
代表作の作品集「夏の花・心願の国」を遺して力尽きたように46歳で自死しました。
その若い日の作家修業も人生の時間もすべてが、
まるでその作品を書くためだけに生まれてきたような、
そんな作家なのでした。
あの日の朝、何があったのか、何が起きたのか、
人々はどう振る舞い、どう生き延びてそして死んで行ったか。
オッペンハイマーが目を背け、
遂に向き合おうとしなかった地上での現実が静謐な文体で克明に綴られています。
不思議なことに作中に、恨みの言葉はひとかけらも出てこないのでした。
了。
さて、人間力研究所には、様々な専門知識やスキルを持った
個性的なメンターが勢揃いしています。
クライアントとして、カウンセリングを受けるも良し、
セッションで癒されるも良し。
ぜひ、 あなたも一緒にメンターとして学び、活躍しませんか?
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MFBメンター・ゆだひろかず
https://mfbmentor.com/official-enneahirokazu/
最後までお読みいただきありがとうございました。
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一般社団法人 人間力研究所
東京都港区三田3丁目1―5 第1奈半利川ビル3階
TEL:03-5765-1127
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皆さまはもう映画「オッペンハイマー」をご覧になりましたか?
※不要なネタバレはしないように気をつけますが、
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映画の内容は?
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人類初の核実験を成功に導くまでの過程と、
並行して共産圏のスパイ疑惑により公職を追放されるまでの
苦悩とをつぶさに描いています。
同時に広島と長崎への原爆投下とその惨状を知り、
一転して水爆開発の反対者となり、
孤立し罪悪感に苛まれ神経を病んでいく様子も。
冒頭の問いに答えると。
オッペンハイマーとは何者なのか?その問いに尽きます。
彼の性格から迫ってみたいと思います。
芥川龍之介の「侏儒の言葉(遺稿)」にこうあります。
「運命は偶然よりも必然である。
『運命は性格の中にある』という言葉は決して等閑に生まれたものではない」
芥川ほど己の生まれ持った性格を呪い、
性格(エゴの声なのだが)に苦しめられた作家もいないように思えます。
「運命は性格の中にある」
その信念ゆえに自死に導かれたのですから、説得力があります。
芥川の用語では「神経」と呼ばれるのですが。
オッペンハイマー(1904〜1967)の運命を決めた彼の性格の正体に
迫ってみたいと思います。
そして後世を生きる私達は知っています。
それは同時に彼の運命ばかりか、
広島と長崎の無辜の民24万人の運命をも左右したことを。
内向型か外向型かを決めるのは、内面と外(周囲)とどこに関心を向けるのを好むか?
そしてどこからエネルギーを得、動機付けられるか?
オッペンハイマーは明らかに内向型です。
(以下、個々の観察結果は、YouTubeに溢れる本人からのデータ分析による)
マインドを形成する心的エネルギーのセンターはどこか?
そのセンターの周りに自我が最も強く形成されます。
彼と世界との関わり方は、
知的戦略とビリーフに支えられているので
オッペンハイマーは思考センターの人です。
社会的動物としての人が、
集団の中で内的葛藤を解決する方法=社会的スタイルはどうか?
原爆製造を率いるリーダーとして、ロスアラモス研究所での彼は、
まるで人が変わったように見え、
一見社交的な自己主張型か融和型の人にも見えますが(これには本能タイプが関わっていて後述します)、
若い日の引きこもり傾向や、
下記の聴聞会での態度から診てオッペンハイマーは遊離型です(関わりから離れることでストレスに対応)。
問題が起きた時の態度はどうでしょう?
オッペンハイマーは合理型の典型です(後の二つは楽観型か感情的反応型)。
トラブルへの対処法は冷静で、個人的感情は脇に置き、
物事を効率優先で客観的、合理的に捉えようとしています。
同じ気質の科学者集団の中ではうまく順応し指導力を発揮できた彼が、
軍人との交渉で苦労し、政治家達に理不尽にも思える論理で糾弾され、
やがて追放される過程に象徴的に現れています。
「ここで起きていることに自分は関係ない。
この人たちとは違う。この場に自分は合わない。」
ここまでで一度整理すると、彼は内向型で、
思考センターで、遊離型で、合理志向の性格タイプ。
つまりそれらを総合すると、
オッペンハイマーは「調べる人(The Investigator)」の可能性が高いと思われます。
別名「考える人」や「観察者」の呼称も。
もっと踏み込むと、
「因習を打破する人」だと思われます。(エニアグラムでいうとタイプ5-4)
彼の実像に迫れば迫るほど、さらにその後の人生に起きたことを加味すると、
「問題を解決する人」(5-6)よりもそっちの方がピッタリきます。
「未来を見通す知性や独創性を見せる。もしくはエキセントリックになって孤立していく」
そのままの人生です。
そしてもう一つの大事な要素として、
上述した彼の「社交性」ですが本能型に秘密が隠されています。
適応と行動に優れるオッペンハイマーは社会的本能優先型です。
(もう二つは性的優先型、自己保存優先型)
愛称はスペシャリスト、専門家です。
2番目が性的本能で、盲点が自己保存本能だと思われます。
最小のユニットが家族で、
次により大きな科学者の国際的なネットワーク、ロスアラモス研究所のチーム、
国家への献身と、国家を超えた大義への貢献、
彼はその狭間で常に葛藤し、現実に葛藤に巻き込まれます。
その上に激烈な競争と嫉妬、名誉欲と、勝ち負けへの拘りと、
強い女性にかしずく傾向と、大人になり切れない子供じみた要素も見え隠れしていました。
原爆開発を引き受ける前、
親友でライバルのアーネスト・ローレンスにノーベル物理学賞が授与され、
先を越されたオッペンハイマーは焦っていました。
短期間での原爆製造の原動力になったのは、
ユダヤ同胞を迫害するナチスドイツへの憎悪と怒りからだっと後に述べています。
それでは「因習を打破する人で、
社会的本能優先型で自己保存盲点の人」の人物像とは具体的にどんなものなのか?
その愛称のスペシャリストという定義のとおり、
特定のタスクや役割を与えられて初めて輝くタイプです。
「観察者」全体の中でも特にエレガントな排他主義があり、
エリート主義があります。
そしてその未成熟なエリート主義者の部分が
やがてオッペンハイマーの人生を左右するアキレス腱となっていくのですが、
ノーラン監督の映画は実にリアルに饒舌に描いていました。
人間の裏表、人間の心の醜さと複雑さ、人間の怖さを彼は知らないかのようです。
ひとつ目は、
オッペンハイマーの対極にある人物として登場する政治家で原子力委員長のルイス・ストロースとの対決です。
8つ年長の彼もまた物理学者に成るのが夢だったのですが、
家が貧しく、社会に出て働かなければならなかった叩き上げの人物。
オッペンハイマーの支援者として近づき、
オッペンハイマーは政府に顔の効く彼を良き助言者、長年の友人として遇していました。
映画「アマデウス」を観た方なら、
天才肌のモーツァルトに嫉妬し死に追いやるサリエリの役割というとわかりやすいかも。
事もあろうにオッペンハイマーは公衆の面前で、
そのストロースの中途半端な知性を辛かい笑い者にした過去があり、
彼は忘れていた節があります。
映画の終盤で、なぜそこまでオッペンハイマーを憎むのかと問われ、
ストロースが告白するシーンがあります。
もう一つ私達が忘れてならないのは、
「頭脳明晰な」知性主義の限界でもあり、
オッペンハイマーの「性格」の欠点に関わる本質的な部分です。
彼は決して「創り出した物と、
その結果に無自覚なナイーブな科学者ではなかった」という点です。
「(原爆を)人間の上に落とすべきではない」と主張した一部の人達の声は掻き消され、
オッペンハイマーは聴こうとはしなかったのです。
原爆実験の成功後、足を踏み鳴らして歓声を上げて喜びを露わにする人々のシーンが描かれていました。
ほどなくして人々の顔が歪み、爛れた皮膚が剥がれ落ち、
崩れ落ちるオッペンハイマーの妄想シーンが描かれ、彼の表情も苦痛に歪みます。
また当時の物理学の水準では、
核爆発で大気が連鎖反応を起こし地球が全滅するかもしれず、
「その可能性は計算できないがゼロではない」と皆恐れていました。
その恐れの中、実験は強行され、恐れは杞憂に終わり、
オッペンハイマーは神との賭けに勝ったと思っていました。
知らなかったのですが、1960年にオッペンハイマーは日本を訪れています。
羽田で記者団から原爆開発を「後悔しているか」と聴かれ、
「後悔はしていない」
「(それは)申し訳ないと思っていないということではない」
と歯切れの悪い返答をしています。
どういう事情があったのか、或いは望まなかったのか、
広島と長崎を訪れることはありませんでした。
死の2年前のインタビューでオッペンハイマーはこう語っています。
記者「今も良心の呵責に苦しんでいるように見えるが?」
「私達には大義があったと信じています。しかし私達の心は完全に楽になってはいけないと思うのです。
私は今になっても、あの時もっとよい道があったと言える自信がありません。私にはよい答えがないのです。」
「世界はそれまでと変わってしまった。」
そして最後に後年有名になった
「我は死 世界の破壊者」
という謎のメッセージを人類に残して62歳で世を去りました。
(出典は、NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」2024年2月19日放送より)
「我は死(神)なり 世界の破壊者なり」
この言葉そのものは、
若い彼が愛読したというヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター(神の詩)」の一節です。
復唱するオッペンハイマーの眼は虚ろに見えます。
この性格特有の冷笑的な攻撃性は影をひそめ、
虚無的で、自己抑制的で孤立し、絶望感でいっぱいの表情にも、
隣のタイプからくる自己陶酔的にも見えます。
性格を特定するための5つ目の要素は、対象関係なのですが、
オッペンハイマーの性格には「拒絶」の特有のパターンがあります。
(原点は親との)愛着関係からの「拒絶」がベースにあるのですが、
迫り来る死を前にして(死因は喉頭がん)、恐らく彼の内面では、
世界と人類すべてを拒絶してしまったと感じていたかもしれません。
オッペンハイマーだけに責めを負わせるのは酷だろうと思います。
ドイツではハイゼンベルクが、日本では仁科芳雄が軍部に駆り出され、
原爆開発を巡って鎬を削っていました。
研究半ばですが、彼ら二人もまた、
オッペンハイマーと同じ「性格」(観察者)だと推測されます。
1904年生まれのオッペンハイマーより1つ下の生まれの日本の作家で、
原民喜という寡作な小説家がいました(明治38年生)。
偶々帰省していた故郷の広島で被爆し、
代表作の作品集「夏の花・心願の国」を遺して力尽きたように46歳で自死しました。
その若い日の作家修業も人生の時間もすべてが、
まるでその作品を書くためだけに生まれてきたような、
そんな作家なのでした。
あの日の朝、何があったのか、何が起きたのか、
人々はどう振る舞い、どう生き延びてそして死んで行ったか。
オッペンハイマーが目を背け、
遂に向き合おうとしなかった地上での現実が静謐な文体で克明に綴られています。
不思議なことに作中に、恨みの言葉はひとかけらも出てこないのでした。
了。
さて、人間力研究所には、様々な専門知識やスキルを持った
個性的なメンターが勢揃いしています。
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